09 創業は易し、守成は難し

創業は易し、守成は難し

表題は、新事業を始めることよりも、その事業を受け継ぎ、衰えないように維持していくほうが難しいとの教えである。唐の太宗とその侍臣との故事がもととなってできた言葉で『十八史略』に出ている。
 あるとき、太宗が「事業を始めるのといったんでき上がった事業を発展させていくのとでは、どちらが難しいか」と尋ねた。これに答えて、房玄齢は創業のほうが、一方、魂徴は守成のほうが難しいと答えた。すると太宗は二人の言い分のもっともなことを認めたうえで、「創業の困難は過去のことだが、守成の困難は現実のことである。だから今は、守成の困難を皆で自覚して正しい政治を行なっていこう」と言ったという。
 創業のときには、人が皆勢いづき、お互いの相乗効果で予想以上の大きな力を発揮することが多い。「戦って勝つは易く、勝ちを守るは難し」と兵書『呉子』にあるように攻撃する側は勢いがつきやすく、守る側は、その勢いで思わぬ負けに追いこまれることがある。しかし勝利を収めた後の守りこそ難しく、守りが強くてこそ、ほんとうに強いといえる。
 この故事は我が社の三十周年の式典において社員に伝えたいこととして、肝に銘じたことである。昭和四十九年二月に創業し今日にいたるまで、大過なくこられたのは、社員の皆さんの頑張りのお陰であり、その三十年の歴史の中で、それぞれの理由があって、我が社を退社していった人達の功績にも感謝しなければならない。
 思いおこせば走馬灯のごとく、失敗したこと、苦しかったこと、悔いの残るできごと、などが次々に思いだされる。しかし我が社の今日があるのは、過去の多くの失敗の積み重ねであることも事実、創業三十周年を機に、これら全てのことに感謝できる自分でありたいと願っている。「過去は変えられないが、未来は、あなたの意志で変えられる。あなたはどう変わりますか」「過去は過去であり、もはや現在ではない。大切なのは現在から予測できる未来ではないのか」。社員の皆さんの幸福を願いつつ、後輩社員の皆様に「創業は易く、守成は難し」を贈る言葉としたい。