16 合志で学んだ志

合志で学んだ志

群の我家から豊岡小学校や合志中学校まで片道約4キロの道のりを歩いての登下校は、足の不自由な私にとって貴重な体験であり、今日の私の志に大きな影響を及ぼしている。

通学路に繰り広げられる畑、野草に彩られた畔道、四季折々の群山の景色、懐かしさで胸が熱くなる。畑仕事に行きかう人に優しく声をかけられ、時には馬車に乗せて頂きゴトゴト揺られての通学など鮮明に思い出す。貧しい土地柄ではあったが人間味あふれ、自然に恵まれ、思いおこせば、ふるさとがありがたい。今私は熊本市に本社を置き九州各県で事業をやっている。目標を立て成功へと導くために大切なことは志であり心構えである。事業を興す際に同志に問うことは、働くことの概念、人への思いやり、夢の共有等である。私は貧しい家庭で育ったお陰で、いつかはきっと幸福になれると信じて働くことの大切さを学んだ。今日まで周囲の人達に助けられて育ち、お陰様での気持ちを忘れることはない。子供の頃の環境は心構えを育み、その心が行動を促し、行動の反復が習慣となり、人格となる。人格は運命を開く。人も会社も同じ、志を基に計画を立て組織をつくり、同志が行動を興す、行動が習慣となり社風となった時に社運は開ける。

いま日本人に最も不足しているものは志であろう。私は合志と記す度に「志」の大切さを確認し合志に生まれ育ったことに感謝する。

合志中学校50周年誌 寄稿文 平成9年2月