第十三話 「5万人の少商圏2千人顧客」

第十三話 「5万人の少商圏2千人顧客」

創業以来訪問販売に努めています。全国の競合他社と競争するのに同じことをやっては勝ち目はありません。熊本に本社を置く意味もありません。熊本の特性を生かすのが訪問販売です。
 大都市では一部の人の支持があれば業績を上げることができるでしょう。人口密度の低い熊本では人と人とのつながり、人間関係を大切にすることが重要です。
 小さく、狭く、濃く、深く、心くばりをしてあらゆる客層の支持を得なければなりません。県内での市場占拠率をアップするしかないのです。そのためにはお客さまに私たちから近づいていく。「小さな町に大きな店を」「大きな町に小さな店を」「お店の成り立たない所には訪ねていく」ことにしました。
 具体的には5万人の小商圏を設定し、友人、知人、親戚、メガネを買ったお客さまが計2千人おられたら、店をつくるということです。その商圏の内外に訪問販売します。訪問販売の起点は農協にお願いしようと思っていました。
 ただ、農協の組合員さんに販売するには経済連の指定をいただくことが必要でした。創業当時、知名度もなく信用もありません。経済連指定は無理難題でした。
 窓口に相談しても「メガネなんか農協では売れないよ」と相手にしてもらえません。全国の農協でメガネを売った前例もなく、奇抜なお願いでした。
 経済連の会長は澤田治男さんでした。鎮西高校時代の同級生、澤田孝一君の叔父でした。彼に頼んだら、澤田会長が自ら来店され、いくつか質問をされた後、高価なメガネを指定され、経済連経由で購入したいとのお申し出がありました。経済連の窓口に行ったら指定店として契約ができました。昭和52(1977)年のことです。
 澤田会長は自民党県連会長のほか、多くの公職をしておられました。大変ご多忙ななか、わざわざ店に足を運ばれて、決断の早さにびっくりいたしました。
 経済連の指定店となり活動範囲は一気に県内一円に広がり、その後の出店戦略、2千人の顧客づくりに大きく貢献しました。「農協でメガネを買える」。他社との差別化戦略として、今も積極的に活動しています。