第十六話 「講師招き社員教育徹底」

第十六話 講師招き社員教育徹底

商業界で人気だった佐藤守講師(前列左から3人目)を招いて開いた社員勉強会=1984年

お店の繁盛および出店戦略の成否は社員教育がすべてです。創業時は弟夫婦と私たち夫婦で十分な戦力でしたが、多店舗展開となると社員教育を計画的に構築する必要がありました。
 主力取引先であるHOYAの協力の下、社員教育のカリキュラムを作成、特に店長教育に力を入れました。HOYAは商品知識を担当しました。
 先に創業時を支えてくれたヒット商品に境目のない遠近両用のレンズがあったと紹介しました。
 このレンズは当時のメガネ業界からすると大変画期的で検眼・加工・フレーム選びに慎重さが要求されます。徹底した商品知識を伴う社員教育が功を奏し、主力商品に成長し、他店との差別化戦略商品になっています。
 社員教育の成果が売り上げに如実に現われたことで、さらに社員教育に力を入れました。
 創業10年目を迎えた昭和59(1984)年ごろから、商業界の人気講師だった佐藤守先生と顧問契約を結びました。正しい商いをやり抜かなければ顧客から見放されるとの危機感から、「店はお客様のためにある」という商業界精神をたたき込んでいただきました。
 「思想は戦略に優先し、戦略は組織に優先する。組織に人を配し戦術を行う。まずは心構えがすべて」と情熱を込めて社員を叱咤[しった]激励していただき、業績は伸びていきました。既に社員は100人を超えていました。全社員の意思統一、モチベーションアップにつなげたかったのです。
 しかし、バブル経済が崩壊してデフレの成熟した社会となると、昭和の成長期の教育システムに陰りが見え始めました。
 平成15年、HOYAの元専務、佐藤隆雄氏と顧問契約を結びました。経営の戦略的進め方、ヒト、モノ、カネの管理手法から数値の分析・検証に基づく緻密な経営計画のつくり方などを指導してもらいました。
 特に幹部には「自ら立てた計画が達成できなかったら辞表を出せ」と、こちらが驚くくらいの気迫で指導していただき、厳しい時代を乗り切ることができました。
 佐藤氏は日本経済の動向から眼鏡業界を予測し、経営計画を練り上げていました。眼鏡業界のリーダーとしての過去の実績に裏打ちされた指導方法は、大変勉強になりました。