第四十話 「『人、生きる、商人』の教え」

第四十話 「人、生きる、商人」の教え

九州新幹線の開通を機に鹿児島へ訪問例会に訪れた商業界熊本同友会のメンバー。左端が米澤さん。2人目が壽崎肇さん

商業界全国連合同友会に入っています。正しい商業の考え方、あり方を追求し実践する全国の商業人の集まりです。
 お互いが成功、失敗の事例を披瀝[ひれき]し合い、商業界精神を理解された先生方や経営者、全国の先輩方の指導を受ける素晴らしい同友会です。同志として胸襟を開き、商人道、つまり商人としての生き方を学ぶ場でもあります。
 商業界は戦後の混乱治まらぬ中、新しい商業の時代を予言した倉本長治先生の思想に共鳴した人たちの集まりでした。その小さな集まりが全国に広がり今日に至っています。全国から集まる本ゼミナール、地方ブロックごとの地方ゼミナールなどが開催されています。九州沖縄連合同友会会長は旧スーパー寿屋を創業された壽崎肇さん、副会長が私です。
 商業界は志をもった商業人とともに歩んできました。はじめは皆小さな店です。小さな店はまず一人のお客さまを満足させます。店は人の心の美しさでいっぱいに満たされていきます。やがて多くのお客さまに、さまざまな地域に、満足が広がっていくのです。
 「店はお客さまのためにある。損得よりも善悪を優先する。そのために滅びてもよし、断じて滅びず」。この精神を貫いた店々に繁盛がもたらされ、この精神に基づく技術を獲得した企業に利益が与えられました。
 現在、業態間、異業種間の、さらには国際間の激烈な競争が日常のこととなりました。この競争の中で自らを革新し、正義のために切磋[せっさ]琢磨[たくま]する。それができる者だけが新たな商業を創出できるということでしょう。
 商業界は宣言します。商業の精神と技術を永遠に高め、続けることを。そして平和国家日本における商業の基幹産業化の歴史の証人であり続けることを。すべての商業者たちよ、高き志をもて。人々の暮らしが十分に満たされる日まで。
 倉本長治先生の跡を継いだ倉本初夫先生は昨年12月15日、90歳でお亡くなりになられた。最後まで商業の発展を願い、商人のあり方を探求された方でした。息を引き取る直前に声を振り絞って「人、生きる、商人」とおっしゃったそうです。人として正しく生きなさい、それが商人のあるべき姿だということ。重たい言葉です。