第四十二話 「店はお客様のためにある」

第四十二話 店はお客様のためにある

ヨネザワ本店を訪ねてこられた仲間の丸往亜士さん(左)。右は米澤さん=8月

創業したのが昭和49(1974)年、前年の末に端を発した石油危機は超インフレと重なって、未曽有の金融引き締めなど経済情勢は極度に厳しいものがありました。
 しかし、創業する人は多かった。小さな店を開くのに重要だったのは人脈、友人、知人、親戚。特に同級生に世話になった。その縁を頼って絆づくりが財産でした。
 同時期に同年代で創業し、お互いに情報交換し、切磋琢磨し成長してきた仲間がいます。全国養鰻漁業協同組合連合会会長で県議の村上寅美さん、自由が丘病院理事長の平原輝雄さん、丸住公認会計士事務所長の丸住亜士さん、飲食業「更紗」社長の永田傳士さんら。創業時に同じような課題があり、よき相談相手でした。
 皆さん個性があり、個性を伸ばすことで事業を繁栄させ、その人なりの業態ができているようです。ただ、その長所は表裏一体、弱点でもあり得ます。理解して、足らないところを補ってくれる奥様方を筆頭に、家族の理解、支えが大きいのです。
 事業を成功に導くためには、一点集中重点主義が必要です。私の場合は金もない、学もない、あるのは働く根性論のみでした。
 働くことに徹し周囲が驚くほどに年中無休、24時間営業を目標にしました。18歳で働きだして今日に至るまで、職場と住居を同じにしてきました。これで夜中でも即仕事にかかれる心構えを今も維持しています。
 また資金調達能力がないから「小さく産んで大きく育てる」こととしました。小が大に挑むためには総合力で勝てるはずがありません。
 しかし、ある一点に的を絞れば相手の隙をつくことができる。わが社の創業原点、小商圏戦略は今も小さく、狭く、濃く、深くを社風として生きています。
 もし、創業時の弱者の苦しみを忘れ、強者の戦略に転換したならば、瞬く間に店は消えてなくなるでしょう。
 店舗数も増え売り上げも順調に伸びていると、自分の力を過信してつい油断します。社を支えているのは一人一人のお客さま。商業界の教えである「店はお客様のためにある」を肝に銘じています。